「画家のおもちゃ箱」

著者:猪熊弦一郎

 

さすがにセンスのある人は違うな、とページをめくるたびに感心させられる、現在は絶版の貴重な一冊。

 

家やアトリエに飾られているコレクションの数々を収めた写真集だが、どれをとっても、「たいせつにしたい」と思わせる品物ばかり。同時に、著者がもっている「物をたいせつにする気持ち」がじんわり伝わってくる。

 

きっと彼は自分のテリトリーのことをこの本で「おもちゃ箱」と言っているのだろう。

自分を愛し慰め楽しませて一緒にいてくれるたいせつなものをたいせつにする場所。

それがおもちゃ箱。

 

 

 

 

   箴言12:10

 

 

   町はおもちゃでいっぱいだ

 

   White Fang

そう思ってみると世界はおもちゃ箱だ。

 

すべてのものは自分のために存在しているおもちゃ。住んでいるところは、はたらくくるまもケーキやさんも海も動物園もあるおもちゃのまち。そう考えるとわくわくしてくる。こんなすごいおもちゃ箱で遊ばなきゃ損だ。

 

そうだ、あしたの朝もおもちゃの兵隊さんたちが八王子駅の通勤電車で無言で椅子取りゲームをしているところを眺めて遊ぼう。少しえらいおもちゃの兵隊さんたちが二番線から中央ライナー号にえらそうに乗るところを眺めて遊ぼう。リタイヤしたおもちゃの兵隊さんたちが登山に行けるように高尾山まで電車を走らせてあげよう。

 

White Fang のおもちゃ箱、そんなにセンス良くないな。

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