「春にして君を離れ」

筆者:アガサ・クリスティ

 

推理小説でもホラーでもない、なぜかクリスティ作品のジャンルの中ではロマンスに分類されているが、決してロマンスでもない、読んで楽しむ小説ではなく、読んでじっくり考える作品。

 

例えば…

 

良かれと思ってしていることって本当に喜ばれているのか。

自分が幸福なのは周囲の遠慮に気付いていないだけではないのか。

自分が「いい人」な行動をするのは問題の本質から目を逸らしたいときではないか。

「君の好きなようにしなさい」と言うのは、妻を人として成長させるという夫の責任を果たすのがめんどくさいときではないか。

 

馬は軽車両らしいですね。
馬は軽車両らしいですね。

 


すべてのことにおいて正直に。

 

ヘブライ13:18

 

 

自分にも正直に。

 

White Fang

自分に正直になっていつもありのままでいられないと本当に幸せにはなれない。

"自分"というキャラクタを作って演じていては幸せにはなれない。

 

特に、模範的なクリスチャン人格というキャラクタを作っている人は、もうそれ以上成長できない。たぶんそういう人はこの小説の主人公と同じで、この小説を読んでも自分に関係あるとは気づかない。「ブログで紹介されてた本を読んで励まされました~」とか言うのが精いっぱい。自分の子どもが主人公の娘と同じ気持ちで育ってきたかもしれないということにもたぶん一生気づかない。

 

立派なクリスチャンになりたい。いい親になりたい。ちゃんとした動機はあってもそれを実現させるための方法が間違っていると周囲の人たちも巻込んで不幸にしてしまう。

 

上手に"模範的なクリスチャン"っぽくしゃべれるようになるのが成長ではない。

霊の実(のようなもの)で本心を巧妙に隠せるようになることが成長ではない。

 

なぜ主人公が自分を見つめ直すのに最後まで失敗するのか。

正直に自己吟味するなら、そこからきっと多くのことを学べるはず。

 

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